LIME研究会

MGDは主に高齢者に見られ,顕在的・潜在的患者数が多いといわれています。これまで,MGDに関するいろいろな疫学調査の報告がされています。Corneaの6月号に,マイアミからの報告(Cornea 2016; 35: 731-735)がありましたのでご紹介します。

 フロリダ州のマイアミ退役軍人医療センター(Miami Veterans Administration Medical Center)の患者さんを対象としています。コンタクトレンズやドライアイ及びその点眼のある人は除外されています。最終的にリクルートされたのは233名の患者さんで,平均年齢は63歳でした。MGD(瞼縁血管異常,マイバム異常)の出現頻度が,性別や人種,喫煙や高血圧・高脂血症があると変化するかどうかを検討しています。調査した対象の55%に瞼縁異常またはマイバム異常が見られました。他にもいろいろな項目が検討されていますが,MGD関連の異常が見られる集団の平均年齢は異常が見られない集団と比較して有意に年齢が高いこと,黒人と比べて白人では瞼縁血管異常が優位に高頻度にみられる,ということが明らかとなっています。

この研究は母集団が退役軍人を対象としたため男性に偏っていること,および対象数が格段に多いというわけではありませんが,メディカルレコードがきちんとしており,眼外合併症との関連も調査されています。たとえば,瞼縁血管異常は鬱患者の患者で有意に低く,睡眠時無呼吸症候群患者では有意に高く,また前立腺肥大のある患者では瞼縁血管異常とマイバム異常が有意に高いということが明らかとなりました。いろいろと比較されているようですが,黒人で非ステロイド系消炎鎮痛剤内服は瞼縁血管異常の発生に抑制的に働くとのことでした。

この論文は,これまでのMGDに関する疫学調査をいくつもレビューしており,この表も大変参考になります。日本からは島崎先生や内野先生,田先生の報告が紹介されています。シンガポールやインドからは対象症例数が3千以上の大規模調査の報告もされているようで,将来的には日本国内からも同じ桁の研究が発信されるべく,研究が進んでいくものと思われます。