LIME研究会

Ophthalmology. 2015 Dec 23. pii: S0161-6420(15)01303-2. doi: 10.1016/j.ophtha.2015.10.062. [Epub ahead of print]

Oral Antibiotics for Meibomian Gland-Related Ocular Surface Disease: A Report by the American Academy of Ophthalmology.

Wladis EJ, Bradley EA, Bilyk JR, Yen MT, Mawn LA.

 

先日、Ophthalmology誌にAmerican Academy of Ophthalmologyからのレポートというかたちで” Oral Antibiotics for Meibomian Gland-Related Ocular Surface Disease”というタイトルの論文が発表されました。これはマイボーム腺関連眼表面疾患に対する抗菌薬内服(ミノサイクリン、ドキシサイクリン、アジスロマイシン)の治療効果について過去の研究論文を調査したものです。これらの治療を報告した過去87論文のうち8論文だけがエビデンスレベルなどクライテリアに合致したとのことです。

さらにこの筆者らが述べるには、これら8論文のうちRCT(randomized control trail、無作為化比較試験)は一つしかなく、従ってマイボーム腺関連眼表面疾患に対する抗菌薬内服はエビデンスが殆ど無いというものです。

このような余りにストレートな結論を導き出した稚拙な論文がAmerican Academy of Ophthalmologyからのレポートというかたちでhigh-cited journalに収載されること自体が、RCT一辺倒主義の風潮を如実に表していると感じた次第です。

消化器系の悪性腫瘍など症例数が多くある疾患ならともかく、眼科のようにマイナー科でマイナーな疾患ばかりを扱う領域では充分な症例数の確保ができないという難題があります。研究計画の段階で無理な症例数を設定し、結果的に症例数が不足して研究の目的を達成できないなどということがあると、それまでに参画してきださった患者さんに対して大きな倫理的問題が生じます。研究の種類に優劣などは無く、目的の達成に最も適して最も倫理的に問題の無い研究がすぐれた研究ではないかと強く思います。