涙で感染症が分かる(かも)
少し前の自分たちの研究の論文を紹介します。
Morishige N,Yamada N,Morita Y,Nakamura Y,Nishida T,Sonoda KH:Detection of ICP0 protein in tear fluid of individuals with active herpetic epithelial keratitis.Jpn J Ophthalmol 55(6):591-594,2011.11
この論文は,角膜ヘルペスという病気の原因である,単純ヘルペスウイルスから出てくるあるタンパク質が涙の中に溶け込んでいる,という仮説のもと行った研究の報告です。写真のような角膜ヘルペスの患者さんの涙を,普段行っているシルマー試験紙で集めて,その涙の中に含まれるICO0というタンパク質を検出しました。すると,このタンパク質は活動性がある角膜ヘルペスの時には出てくるのに,病気が出て少し時間が経つと出てこなくなります。ICP0というタンパク質が,ウイルスがどんどん増えている時に出てくるタンパク質なので理にかなっているのですが,涙を集めて,涙の病気以外のことが分かるというのはとても興味深いことです。この研究でもう一つ分かったことは,ヘルペス性角膜内皮炎という目の中の病気の時にも,涙の中にこのICP0が出てきて,検出できることです。写真のような角膜ヘルペス(上皮型)は目の表面の病気なので涙の中にCIP0が出てくるのも理解しやすいのですが,目の中でヘルペスウイルスが悪さをしている最中でも涙の中にICP0が出てくるのは驚きです。
涙の中には,ウイルスやアカントアメーバなどの病気の原因になる微生物自体が出てくることもありますので,涙は目の病気のこと以外のことも教えてくれます。