LIME研究会

﨑元です。Ophthalmologyの今年1月号に掲載された論文を紹介します。

Aragona P, Aguennouz M, Rania L, Postorino E, Sommario MS, Roszkowska AM, De Pasquale MG, Pisani A, Puzzolo D.

Matrix metalloproteinase 9 and transglutaminase 2 expression at the ocular surface in patients with different forms of dry eye disease.

Ophthalmology. 2015 Jan;122(1):62-71.

 

イタリアの研究者グル-プからのこの論文は、シェーグレン症候群によるドライアイ症例とMGD(マイボーム腺機能不全)症例における眼表面でのMMP-9とTG2の発現について検討しています。また、角結膜の炎症性疾患に対して欧米や韓国などで認可されているロテプレドノール点眼(Lotemax®、ボシュロム社)のシェーグレン症候群のドライアイとMGDに対する効果も検討しています。

MMP-9は、角膜潰瘍や眼表面炎症性疾患などにおいて幅広く発現する炎症性の酵素で、TG2は細胞死(アポトーシス)を誘導する酵素で高浸透圧との関連も示唆されています。

ドライアイ・MGD患者の上鼻側球結膜からのインプレッションサイトロジーで検体を採取し、MMP-9とTG2発現をPCRなどで検討しています。

結果、MMP-9もTG2も正常対照<MGD<ドライアイで発現亢進しており、いずれの発現もロテプレドノール点眼で抑制されたとのことです。また、ロテプレドノール点眼により、ドライアイ群・MGD群の双方で自覚症状や角結膜スコアなどの改善がみられています。このことは、欧米での基準におけるドライアイほどではないがMGDも炎症を伴うものであるということを改めて示すとともに、眼圧上昇という副作用が起こりにくい眼科用剤であるロテプレドノール点眼のMGDに対する有効性を示すものです。

ロテプレドノールは、糖質コルチコイドにエステル基が付加されたプレドニゾロン誘導体です。このエステル基が生体内で加水分解されると糖質コルチコイド受容体に結合できなくなるため、体内に吸収されると不活性化されるようです。そのため眼表面では作用を発揮しつつ眼圧上昇を来しにくい特性があります。ロテプレドノールのMGDに対する有用性については昨年のAm J Ophthalmolに韓国・延世大学のグループからも報告があります。今後が楽しみな点眼薬ですね。