油層は液層の蒸散を防止するのか?
「涙液油層は涙液表面に広がり,涙液液層の蒸散を防いでいる」これは眼科医は真実として語られている事だと思います(筆者も信じて疑いません)。油は水よりも沸点が高いため,水だけよりも表面に油が拡がっていれば水は蒸発しない,角結膜表面に水が拡がった水分は油で護られている…って,本当?と言うことで時間のかかる実験をしてみました。
- 同じ直径の試験管5本を用意して,5mlの水道水を入れる。
- 実験室にある“コーン油”を,量を変えて試験管に注ぐ(図1)。
- そのまま机の横(窓のない部屋,空調は常に26度湿度60%)において観察開始(2016年3月22日,APAO2016に出かける前の日ですね)
- なかなか減らないので,日眼を過ぎ,ARVOを過ぎた頃に写真を撮影(図2)。
コーン油を1mlふんだんに注いだ試験管の水の量は減っていませんが,その他の試験管の水は減っています。予想ではコーン油の量依存性に…と思ったのですが,表面張力のためでしょうか,油の量が100ul以下では油が水面の中央に集まってしまい,水面を覆っていない事が分かりました。いずれにしても,1mlの試験管を見れば一目瞭然,水の表面を油が覆っていれば水は蒸発しない,と言うことが示されました(かもしれません…)。
本物の涙液は,少量の油がきれいに水層の上に拡がるという実験では再現できない“奇跡”が起きています。この“奇跡”が起こるためには,油層の油の成分や水層に含まれる色んなタンパク質のバランスが大切なんだろうな…と勝手に考察を加えて,この実験を終了します。