最新のMGD治療 : 点眼治療
MGDの推奨治療アルゴリズム
Stage | 臨床所見 | 治療 |
---|---|---|
1 | 自覚症状 なし MGD所見 軽度 眼表面異常なし |
患者教育 温あん法 +リッドハイジーン |
2 | 自覚症状 軽度 MGD所見 軽度 眼表面異常 なしor軽度 |
上記に加えて ω-3脂肪酸摂取 圧出・マッサージ 人工涙液・点眼 アジスロマイシン点眼 |
3 | 自覚症状 中等度 MGD所見 中等度 眼表面異常 中等度 |
上記に加えて テトラサイクリン内服 ドライアイに対する抗炎症治療 |
4 | 自覚症状 強い MGD所見 重症 眼表面異常 高度 |
上記に加えて ドライアイに対する抗炎症治療 |
MGDと抗菌薬(テトラサイクリン系、マクロライド系)
リパーゼ阻害作用(basic science level I and Ⅱ)
リパーゼ → 遊離脂肪酸産生
(涙液層の不安定化、炎症促進、ROS産生、好中球遊走化)
抗炎症作用
- テトラサイクリン系
- 炎症性サイトカイン・ケモカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)産生抑制、抗酸化作用、MMP産生抑制
- マクロライド系
- IL-8, IL-6, TNFαの産生抑制、好中球遊走抑制
MMP9産生抑制、TGF-β1発現増加
抗菌ではなく抗炎症をねらって処方
アジスロマイシンについて
アジスロマイシンの特徴
- 長時間体内に留まる
- これは15員環に窒素原子が入っているという構造に由来し、血中濃度より10〜100倍の組織、細胞内濃度を得ることができるため半減期が68.1時間(500 ㎎全身投与時)ときわめて長い。
- マクロライド系の抗菌薬である
- 15員環マクロライド系抗菌薬
- 分子量 749g/mol
アジスロマイシンの薬理効果
- 静菌的作用
- グラム陽性菌、グラム陰性菌に幅広く効果を示す
- 組織内の滞留時間が長い
- 抗菌作用以外の効果にも期待できる
抗菌スペクトル
- 前部眼瞼炎
- ブドウ球菌・殺菌・眼瞼への移行
→フルオロキノロン(高濃度製剤)・ベストロン - マイボーム腺炎
- C. acnes/ブドウ球菌・殺菌・眼瞼への移行
→フルオロキノロン(高濃度製剤) +マクロライド - 分泌減少・増加型MGD
- C. acnes・静菌的も可・抗炎症・眼瞼への移行
→マクロライド(アジスロマイシン点眼)
アジマイシン点眼(抗菌・抗炎症作用)によるMGD治療
マクロライド系抗菌薬となるアジスロマイシン点眼液は、2007年に米国で結膜炎点眼治療薬として承認を得て以降、MGDへの有効性について常に注目されてきました。
日本では2019年に製造販売承認がなされ、2019年9月より「アジマイシン点眼液1%」として処方が可能になりました。
アジスロマイシン点眼の利点としてC.acnesに高い感受性があること、抗炎症作用があることが上げられます。
静菌的ではありますが、MGD治療では抗炎症作用を重視しているため、問題ありません。
マクロライド系であるアジスロマイシンが直接、マイボーム腺の上皮細胞に作用し、脂の分泌を促進することが証明されています。
Luchs J.Adv Ther. 2008 / Opitz DL, Tyler KF. Clin Exp Optom. 2011
Foulks GN, et al. Cornea. 2010 / Liu Y, Ding J.Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014
Zhang, et al. JAMA Ophthalmol. 2015 / Zandian, et al. Int J Ophthalmol. 2016
Yildiz, et al. J Ocul Pharmacol Ther. 2018 他多数
Foulks GN, et al. Cornea. 2010 / Liu Y, Ding J.Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014
Zhang, et al. JAMA Ophthalmol. 2015 / Zandian, et al. Int J Ophthalmol. 2016
Yildiz, et al. J Ocul Pharmacol Ther. 2018 他多数
【参考文献】
AZM点眼をMGD患者さんに処方するときは「眼瞼炎」の病名をつけてください。
MGDは眼瞼炎の一部なので、適応外処方ではありません。
詳細は「眼瞼炎」のページをご覧ください。
アジマイシン点眼液注意点
- 点眼方法の注意点
- 温罨法、リッドハイジーンとAZMは最初からセットで使うと効果的
- AZMは自宅でも冷蔵庫に冷やしておく
(点眼1滴をきちんと実感するため) - 点眼ボトルを真下に向けて垂直に
- 数回振る動作は省略
(点眼ボトルのネック周辺に溜まるとどろっとたくさん出てしまう)
- 点眼時注意点
- 最初の2日間は、信じられないほどしみたり、痛かったり、充血したりします。
- 3日目からほぼしみなくります。
- 3日目以降の1日1回の点眼は夜がおすすめです。
(症状が朝に強く出る人が多いため) - 点眼薬のキャップをきっちり閉めてください。