- 医療従事者用トップページ
- MGDの診断・治療:マイボーム腺とは
- MGDの定義、分類、診断基準
MGDの定義
「様々な原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり、慢性の眼不快感を伴う」
MGDは原発性のものと、アトピー、スティーブンス・ジョンソン症候群、移植片対宿主病、眼感染症などに続発する場合がある。
マイボーム腺に発生する疾患としては、霰粒腫、内麦粒腫などがある。これらが局所的な疾患であるのに対して、MGDはマイボーム腺機能が瀰漫性に障害されている。そして、MGDは眼不快感、乾燥感などの自覚症状を伴う。
MGDの分類
- 1.分泌減少型
-
- ① 原発性(閉塞性、萎縮性、先天性)
- ② 続発性(アトピー、スティーブンス・ジョンソン症候群、移植片対宿主病、トラコーマ等に続発する)
- 2.分泌増加型
-
- ① 原発性
- ② 続発性(眼感染症、脂漏性皮膚炎等に続発する)
分泌減少型MGDの診断基準
以下の3項目(自覚症状、マイボーム腺開口部周囲異常所見、マイボーム腺開口部閉塞所見)が陽性のものを分泌減少性MGDと診断する。
- 1.自覚症状
- 眼不快感、異物感、乾燥感、圧迫感などの自覚症状がある。
- 2.マイボーム腺開口部周囲異常所見
-
- ① 血管拡張(図2)
- ② 粘膜皮膚移行部(MCJ)の前方または後方移動(図3)
- ③ 眼瞼縁不整(図4)
①‐③のうち1項目以上あるものを陽性とする。
- 3.マイボーム腺開口部閉塞所見
-
- ① マイボーム腺開口部閉塞所見(plugging、pouting、ridgeなど)(図5)
- ② 拇指による眼瞼の中等度圧迫でマイボーム腺から油脂の圧出が低下している。
①、②の両方を満たすものを陽性とする。
分泌減少型MGDの診断基準一般の眼科外来で施行可能な検査項目のみを診断基準に組み込んだ。
分泌減少型MGDの診断に必要な項目は大きく分けて3つあり、1.自覚症状、2.マイボーム腺開口部周囲異常所見、3.マイボーム腺開口部閉塞所見である。これら3項目すべてを満たす場合に、分泌減少型MGDと診断する。
分泌減少型MGDの自覚症状としては、眼不快感、異物感、乾燥感、圧迫感などが多い。
分泌減少型MGDのマイボーム腺開口部周囲異常所見は、血管拡張(図2)、粘膜皮膚移行部の前方または後方移動(図3)、眼瞼縁不整(図4)があり、これら3つの所見のうち少なくとも1つがある場合、マイボーム腺開口部周囲異常所見陽性とする。
マイボーム腺開口部閉塞所見の判定においては、まず細隙灯顕微鏡でマイボーム腺開口部閉塞所見(plugging、pouting、ridgeなど。(図5)がある事を確認し、更に拇指による眼瞼の中等度圧迫でマイボーム腺から油脂の圧出が低下している事を確認する。この2つの所見が両者ともある時にマイボーム線開口部閉塞所見が陽性であると判定する。
分泌減少型MGDの診断に関する他の参考所見
分泌減少型MGDの診断のときに参考になる検査を以下に挙げた。
非侵襲的マイボグラフィーはMGD診断に非常に有用な検査法である。
- マイボグラフィーでマイボーム腺が脱落、短縮(図6)
- 涙液スペキュラー油層所見が欠損
- マイボメトリーで貯留油脂量が減少
- 涙液蒸発率測定で蒸発量亢進
- コンフォーカルマイクロスコープで腺房拡大、腺房密度減少
- 角膜中央より下方の上皮障害
- 涙液層破壊時間が減少
MGDと他疾患概念との関係
MGDには、涙液油層減少から生じる蒸発亢進型ドライアイとしての涙液の疾患として、また、マイボーム腺開口部周囲の炎症や導管内脂質過剰蓄積などの眼瞼疾患の側面がある。
ただし、涙液量、病期、重症度によってドライアイあるいは炎症を伴わない場合もある。
MGD、ドライアイ、後部眼瞼縁炎の関係を概念図としてあらわす(図7)。
【参考文献】
- ・
- 天野史郎、有田玲子、マイボーム腺機能不全ワーキンググループ;あたらしい眼科27
(5)627-631.2010
MGDによる流涙のメカニズム
MGDの代表的な症状のひとつに「涙目(流涙、または流涙感)」がある。これには2つの経路が考えられている。
1つめは、MGDになると涙液が蒸発しやすい状態で、角膜が露出してしまうことにより反射性の流涙がおきることであり、2つめは、涙液油層の減少により、涙液の恒常性を維持するために涙液水層が増加する、というものである(図8)。
(文責 有田玲子)
MGDは大きく分泌減少型と分泌増加型に分けられる。臨床における頻度は分泌減少型のほうが分泌増加型よりも高いとされているが、疫学調査などはまだない。
分泌減少型MGDは閉塞性、萎縮性、先天性などの原発性のものと、アトピー、スティーブンス・ジョンソン症候群、移植片対宿主病、トラコーマ等に続発する続発性のものがある。分泌減少型MGDでは、原発性の中の閉塞性のものが最も頻度が高いといわれている。原発性の中の閉塞性ではマイボーム腺導管内に過剰角化物が蓄積し、マイボーム腺脂の分泌が低下し、マイボーム腺の腺房の萎縮が徐々に進行する。続発性では様々な原因によってマイボーム腺開口部の閉塞が起き、マイボーム腺脂の分泌が減少する。
分泌増加型MGDも、原発性のものと、眼感染症や脂漏性皮膚炎などに続発する続発性のものに分けられる。分泌増加型MGDではマイボーム腺からの油脂分泌が過剰になっているが、これを分泌減少型MGDの前段階とする考え方と、分泌減少型MGDとは別のメカニズムによるものとの考え方があり、いまだその病態は不明である。