LIME研究会

みなさま こんにちは。 昨日に引き続き、有田玲子です。 昨日はMGD(後部眼瞼炎)とドライアイの症状を鑑別する”流涙感”いわゆる”涙目”について疫学調査のデータからお示ししましたが、実はこれには医学的理由があるのでそちらを本日は説明させていただきますね。 医学的理由その1:涙液の水は午前中がピークで夕方になればなるほど減少する。夜はほぼ出ない。

Diurnal variation of human tear meniscus volume measured with tear strip meniscometry self-examination.

Ayaki M, Tachi N, Hashimoto Y, Kawashima M, Tsubota K, Negishi K.PLoS One. 2019 Apr 23;14(4):e0215922.

Apparent time-dependent differences in inferior tear meniscus height in human subjects with mild dry eye symptoms.

Srinivasan S, Chan C, Jones L. Clin Exp Optom. 2007 Sep;90(5):345-50.

他多数 医学的理由その2:マイボーム腺分泌脂(マイバム)に日内変動はなく、1日中、ほぼ同様の量の脂が出ている。瞬目によって分泌されることが多いので、就寝中、閉瞼していれば脂は分泌されないが、多少でも瞼が動くと夜中でも脂は分泌される

The diurnal secretory characteristics of individual meibomian glands.

Blackie CA, Korb DR. Cornea. 2010 Jan;29(1):34-8.

医学的理由その3:Compensation theory→涙液の油層と水層はお互いに補い合う関係にある→水層が減れば油層が増える、油層が減れば水層が増える つまり、MGDの患者さんは油層が減っているので、それを補うために水層からたくさんの水が供給されている

Increased Tear Fluid Production as a Compensatory Response to Meibomian Gland Loss: A Multicenter Cross-sectional Study.

Arita R, Morishige N, Koh S, Shirakawa R, Kawashima M, Sakimoto T, Suzuki T, Tsubota K. Ophthalmology. 2015 May;122(5):925-33

他多数 上記のことから、水が足りないタイプのドライアイの患者さんは夕方になるほど眼乾燥感や眼異物感、眼精疲労などの症状が強くなることがわかります。また、後部眼瞼炎(MGD)の患者さんは夜でも質の悪い脂が出続けており、朝起きたときにピークにねちゃねちゃする不快感を味わうことになると想像されます。 その後、日中はCompensation theoryにより、涙液の水が多く出るため、実際はこぼれるほどの涙が出ているわけではないのに(でも涙液量は実際増えるのでメニスカスは高くなっている)流涙感を感じていることが多いのです。

 

実際流涙感を訴えて来院されたMGD(後部眼瞼炎)の患者さんのお写真を供覧しました。眼瞼縁がぬれて気持ち悪い感じ、少しは伝わったでしょうか? 来週はわかりやすく簡易的眼不定愁訴鑑別フローチャートをホームページに掲載しようと案を練っています。

よい週末を!!