知って得する眼瞼炎シリーズ②眼瞼炎とドライアイを鑑別する症状とは
みなさま こんにちは 有田玲子です。
眼瞼炎のページを公開してから、LIME研究会HPへのアクセス数は従来の5倍以上に増加しております。これも眼瞼炎でお困りの先生がた、患者さんがたくさんいらっしゃるということの反映だと思いますので少しでもお役に立てていればうれしく思います。
本日は多くのみなさまからお問合わせいただく”眼不定愁訴”についてです。一度にこの”眼不定愁訴”を解決することは難しいのでひとつひとつ、順を追ってご説明していければと思っています。
眼不定愁訴とは人によって表現方法の違う、また時によって症状の強さが変わる漠然とした眼不快感を指します。例えば、眼精疲労、眼痛、眼違和感、眼異物感、眼灼熱感、眼脂が出ている感じ、流涙感、眼乾燥感などです。
紀元前460年、ギリシャでヒポクラテスが迷信や呪術から経験科学として医学を施しはじめたときから、患者さんの自覚症状を聞き取り、そのなかに多くのヒントを見出し、疾患を推察する重要性が指摘されてきました。現在、多くの診断機器が開発され、人工知能が診断に応用されるようになっても、医者と患者さんを最初につなぐのは自覚症状を聞き取ることだといえるでしょう。しかし、地方によって、世代によって、人によって、症状の表現のしかたが違うので、正しく症状を伝えること、理解することは時に難しいのも事実です。
今回、眼瞼炎(特にMGD)とドライアイを鑑別する症状について、LIME研究会で昨年行った住民検診(平戸度島検診)の結果をご紹介いたします。
眼瞼炎(特にMGD)に多い症状
眼精疲労(65.0%), 眼脂が出ている感じ (63.2%), 眼掻痒感 (58.9%), 流涙感(57.2%)
ドライアイに多い症状
眼精疲労 (79.8%), 眼のぼやけ (66.7%), 眼脂が出ている感じ (65.7%), 眼掻痒感(63.2%)
やはり、非常に似通っています。症状だけで鑑別するのは確かに難しいのでしっかり診察をうけてほしいのですが、そんな中、この両者を鑑別できる唯一の症状は”流涙感”ということが統計学的に示唆されました。MGDの患者さんは約6割で流涙感を訴えるのです。
こちらはMGD(横軸)とドライアイ(縦軸)をよく表す症状を因子分析という統計手法で図にしたものです。MGDに近い症状は流涙感のみ、ドライアイのほうは眼乾燥感、眼異物感、眼痛、眼掻痒感、充血があげられます。両方の疾患に共通している眼精疲労は両者を見分ける、という観点からはふさわしくないので図のどこにも入ってきていませんね。
次回、眼不定愁訴を見分ける診断の手順などをホームページにアップしまして解説させていただきます。
今後は眼瞼炎のフォトギャラリー(症例紹介)も作成してさらにホームページの充実を図っていく予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました(^^♪