LIME研究会

こんにちは。有田玲子です。

みなさま、いかがお過ごしですか?東京は梅雨に入り、どんよりとした雨空やはたまた暑い晴れ日などを3日ごとに繰り返しているような毎日です。気温差もあり、また梅雨寒の日もありと体調を崩されているかたも多く見受けられ、特に咳をともなう風邪が流行っているようです。

そんな梅雨空のなか、日本ではLIME研究会にとっても、従来の治療に抵抗性を示すMGDの患者さんのためにも、とびっきりの明るいニュースが飛び込んできました。

1%アジスロマイシン点眼液(商品名アジマイシン点眼液1%、千寿製薬)の製造販売承認のお知らせです!こちらはマクロライド系抗生物質点眼剤で日本では結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎に適応が認められた点眼剤です。特筆すべき点として、眼瞼への移行性、滞留性が大変高い薬剤で、マイボーム腺機能不全(≒後部眼瞼炎)の治療にもすでに海外より15本以上の論文にてその有効性が報告されています

http://www.senju.co.jp/medical/products/__icsFiles/afieldfile/2019/06/18/
AZIMYCIN_TE_C1_20190618.pdf

その作用機序としては抗菌薬としての効果だけではなく、アジスロマイシンがもつ強い抗炎症作用だといわれています。さらに、マイボーム腺やドライアイの世界的リーダーであるHarvard Medical School、Schepens Eye Research InstituteのDr. David Sullivanのチームが、”アジスロマイシンは直接、マイボーム腺の上皮細胞に作用し、マイボーム腺脂の分泌を促進する”ことを証明しています。(Davidは今年、第8回LIME international meetingで特別講演をしてくださいました)

Effect of azithromycin on lipid accumulation in immortalized human meibomian gland epithelial cells.

Liu Y, Kam WR, Ding J, Sullivan DA. JAMA Ophthalmol. 2014 Feb;132(2):226-8. 

この薬剤、2007年に米国FDAで結膜炎にて承認を得てから、Off-labelでありながらMGDへの有効性が発表され続け、実は私も2010年に個人輸入で1本1万円で5本ほど購入し、当時、治療に難渋していたMGDの患者さんに処方してみた経験があります!(IRBの承認、患者さんの同意を得て処方しております)

以下に点眼処方ビフォーアフターのお写真を供覧します。

83歳女性、脂漏性(分泌増加型)MGD 

主訴:10年以上前から眼不快感、常に眼脂が出ている感じ、流涙感、灼熱感。

点眼前 瞬目するたびにFoaming(+)

点眼前:Foamingはどんな治療でも消失せず、患者の眼不快感の原因

 

点眼開始後1週 Foaming消失、自覚症状消失

 

点眼前瞼縁の充血あり

点眼開始後1週間 眼瞼縁の充血所見改善

 

大変、効果のある点眼液で切れ味もよく、私自身、その効果を鮮明に覚えています。1日2回の点眼を2日間、その後1日1回を12日間と用法もかなり特徴的です。

従来の治療でなかなか治療効果の得られなかったMGDの患者さん(分泌減少型、分泌増加型両方)、もちろん、新鮮例の前部眼瞼炎、後部眼瞼炎の患者さんに有効な治療薬として処方していきたいと思っています。日本以外では、眼瞼炎への処方はOff-labelですが、日本では世界で初めて、千寿製薬さんの努力の甲斐ありまして、眼瞼炎の適応もとれていますので、正々堂々と眼瞼炎の患者さんにアジスロマイシン点眼液を処方できるのは素晴らしいことです。

LIME研究会のホームページ上でも、”眼瞼炎とMGDの密なる関係”について新しいページを開設するべく現在準備中です。今月中には公開できる見込みですので、公開しましたらまたご案内させていただきます。

アジスロマイシン点眼液を、やっと日本で困っている多くの患者さんに処方できるときが近づいてきました。アジマイシン点眼液9月発売予定です。乞うご期待!