涙液のHomeostasis(compensation theory)-具体例ー
みなさま、寒い毎日が続きますがお元気でお過ごしですか?
今日は、昨年、みなさまにもお知らせいたしました
“Increased tear fluid production as a compensatory response to meibomian
gland loss: a multicenter cross-sectional study” Ophthalmology in press.
に関しまして具体的な症例を提示いたします。
みなさまのご経験されている患者さんに似たようなかたはいらっしゃいませんか?
症例
72歳男性
主訴:流涙感、眼不快感
視力:(1.0×IOL)
臨床所見:眼瞼縁に血管拡張、マイボーム腺開口部plugging,眼瞼縁不整
BUT5秒、角結膜上皮障害なし、涙液メニスカス 非常に高い
有田式攝子でtooth-paste like meibumが圧出された(島崎分類2)
マイボグラフィー:上下とも高度にマイボーム腺が脱落、短縮している(マイボスコアは上下とも3ずつで合計6)
シルマー検査:17mm
このように、視力はいいのに流涙症状や眼不快感でつらい自覚症状をうったえる患者さん、いらっしゃいませんか?
そしてそのような患者さんの眼瞼縁やマイボーム腺の脂、マイボグラフィーに病的変化を認め、メニスカスやシルマー値(涙液量を示すパラメータ)が上昇していませんか?
このような観点から注目するとMGDの患者さんは流涙症状を訴えるかたが多く、また実際に涙液量が増加しています。そして、その増加量はマイボーム腺の消失面積(マイボスコア)と相関します。
そうです、涙液の脂分が減ったら水が増えて涙液の安定性を維持しようとしているのです
人間のカラダってすみずみまで本当によくできているものだと感心します。
私たちの仕事って、新しく検査法や治療法を開発することではなく、
人間のもともともっている能力を100%引き出す環境をつくるだけなのかも、と謙虚に思う今日このごろです。
でもそれを明らかにして、国際的にその知見を共有するのがLIME研究会の重要なお仕事です、ハイ。今年もがんばります