霰粒腫後のマイボーム腺形態と高次波面収差
こんにちは。LIME研究会「涙のあぶら」プロジェクトの福岡です。
先日、霰粒腫(さんりゅうしゅ)後のマイボーム腺形態と高次波面収差についての研究が、Clinical Ophthalmologyに掲載されました。
Changes in meibomian gland morphology and ocular higher-order aberrations in eyes with chalazion.
Fukuoka S, Arita R, Shirakawa R, Morishige N.
Clin Ophthalmol. 2017 May 30;11:1031-1038.
霰粒腫はマイボーム腺というまぶたにあるあぶらの腺がつまってできるしこりです。霰粒腫ができたこと、さらに霰粒腫の切除術を受けることにより、マイボーム腺にダメージが与えられる可能性があります。
霰粒腫切除術後(平均20年後)の7眼と、同年代の正常眼7眼とを比較しました。
正常眼と比較すると、術後眼ではBUTが短縮していました。
非侵襲的マイボグラフィー(BG-4MとKR-1W、トプコン)で観察すると、術後眼では正常眼に比べて、マイボーム腺の脱落や短縮が多く、マイボーム腺消失面積の割合(マイボスコア)も高くみられました。
また、ウェブフロントアナライザーKR-1W(トプコン)で眼球の全眼球の高次波面収差について検討しました。正常眼と術後眼では開瞼直後の初回の全収差は差がありませんでした。正常眼では、10秒間連続開瞼して測定しても全収差に変化はありませんでした(下図a)が、術後眼では、10秒間連続開瞼すると、徐々に全収差が増加してきました(下図b)。
すなわち、霰粒腫を大きく切除するということは、術後長期経過した後でも、涙液の安定性や視機能に影響しうるということになります。
2017年4月9日の、LIME研究会主催マイボーム腺講習会にて、“霰粒腫、大きく切るか、温存するか”というテーマで、慶応大学の野田実香先生とディベートさせていただいた際にもこの論文について取り上げさせていただきました。
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